ずっと、ずっとむかしのおはなしです。いまのこうなんくのさいどとみなみくのべっしょのさかいのところに、「もちいさか」というさかがあります。いちりづかといって、みちしるべのために、おおきなまつもうえられていました。もちいさかは、かまくらじだいにつくられたみちで、かまくらしたのみちのなかでもとくにみちがけわしく、くさきにおおわれてひるでもうすぐらく、さかがとてもきゅうなことでゆうめいでした。たびをするひとたちは、かくごをきめて、のぼっていったのでした。
あるひのこと、きょうとからたびをつづけていましたみちこしじゅんきさきという、えらいおぼうさまがこのみちにさしかかりました。むらびとから、「きゅうなさかでの、きいつけんさいね・・・」
ということばをききおわらないうちにのぼりはじめたのでした。きょうじゆうに、こすがやあたりまでいきたいとおもっていたからでした。
もちいさかのひ 　もちいさかというからには、さかのうえのちゃみせではもちをうっているにちがいないと、すっかりおもいこんでしまいました。
ひさしぶりにこうぶつのおもちがたべられる、それまでのしんぼう、しんぼう、とじぶんにいいきかせて、きついさかみちを、あえぎ、あえぎのぼっていくと、やっとのことでさかのうえまでたどりつきました。
いっけんのちゃみせがめにいりました。「あ、、やれやれ、つかれたなあ」
といいながらも、おもちがチラツキはじめ、あしどりもかるく、ちゃみせのしゅじんにこえをかけました。　しかし、おぼうさまがあれほどたのしみにしていたおもちはなかったのでした。
ほんとうにがっかりしたのでしょう、このたびのようすをまとめたかいこくざっき）というにっきにこんなはいふをかきのこしていたのでした。これは、こういういみになります。
やっとのおもいでもちいさかにたどりついて、おもちをたべられるかときたいして、あたりをみわたしたが、もちやはなくて、ただはいているわらじがあしにくいこんでいるだけだ）
いまでももちいさかののぼりきったあたりを「あまざけだい」といいますが、このおはなしのずっとあとになってから、なんげんかのちゃみせではあまざけをうっていたそうです。でも、おもちをうっていたかどうかは、よくわからないんですって。